【第1弾】Gender Equality for Sophia~活動内容編~
- 課外活動団体
団体で行っているSDGsの取り組みについて、学生有志団体「Gender Equality for Sophia(GES)」の共同代表、法学部法律学科の稲井清香さんと、総合人間科学部心理学科の佐藤有莉さんにインタビューを行いました。
※本記事では、団体の活動内容や想いについて記載しております。GESさんと大学の協働により実現した、生理用ナプキン無料提供サービス「OiTr」*1設置に関する取り組みについては、「【第2弾】Gender Equality for Sophia~OiTr編~」(https://diversity-sustainability.sophia.ac.jp/efforts/2542/ )をご覧ください。
——個人的にGESさんの活動の様子をSNSで拝見しておりまして、その行動力の凄さに圧倒されています。そんなGESさんの創立の背景について教えてください。
稲井さん:
ありがとうございます。GESは、2021年4月に立ち上がった団体です。まず、先代の代表・副代表である3人が、「大学におけるジェンダー関連科目が少ない」という共通の問題意識の下で集まりました。次に、この問題をどう変えていくかを考えたときに、「大学に伝えないとこの問題って変わらないよね」「ここで喋っていても変わらないよね」となり、大学へ要望書を提出する際に、メンバーを募り、団体化して大学に話をしていこうという方針ができたことで、団体が立ち上がりました。
そのときに、1つの問題だけではなく、上智大学にあるジェンダーの問題を挙げていったことで、現在取り組んでいる、①生理用品の無償設置、②ジェンダーセクシュアリティに関する研修、③ジェンダーセクシュアリティセンターの設置、④オールジェンダートイレの設置、⑤ジェンダー・セクシュアリティ(GS)関連科目の増設、以上5つのプロジェクトに繋がりました。
——どういった経緯でGESのメンバーになったのですか?
稲井さん:
私は、先代の団体の中核となるメンバーが団体を立ち上げる際に、上智でジェンダーに関して取り組みをしている、あるいは問題意識を持っている学生を集めていた段階でお声がけいただいた1人なので、一応立ち上げメンバーという形で入らせていただきました。その時私は、ICUの学生団体でジェンダー問題に関する取り組みを行なっていたのですが、自分がいる環境をプロジェクトベースで実際に変えていけるところに魅力を感じて、この3人と上智大学を、自分たちの環境を、変えていきたいなと思って入団を決めました。
佐藤さん:
私は去年の秋学期から入りました。まず“立場の心理学”という授業でGESのメンバーの方が講義に参加していらしたのでそこからGESの存在を知りました。また、この授業を通して自分自身がセクシュアルマイノリティーの方を無意識のうちに傷つけてしまっていた可能性があることを自覚したこともあり、GESのメンバーの方々のように実際に行動に移すことに憧れて、入ることに決めました。
——皆さん同じ目的をもって活動されていると思いますが、ほかのメンバーの方々はどういった経緯で入団されたのでしょうか?
稲井さん:
(佐藤さんと同じように)“立場の心理学”という授業でGESの存在を知ってくださったり、Instagramでのリール動画「もしも上智大学に生理用品が設置されていたら?」*2を視聴して「面白そう!」と感じて入団してくださったりした方もいます。
——“立場の心理学”では、ゲストとして講義に参加されたのでしょうか?
稲井さん:
先生から団体の方にお声がけいただいて、講義のゲストという形で自身のセクシュアルなマイノリティ性が大学や普段の生活においてどういった不自由があるか話してくれたメンバーもいました。個人的には、生理用品の無償設置に向けてのアンケート調査のためにお邪魔させていただきました。当時、創立してから3か月目くらいで知名度も低かったので、アンケート回答もかねて幣団体についてもお話させていただいた次第です。
——活動を通して、周囲の人の意識が変わったと実感したことはありましたか?
佐藤さん:
GESに入る前はインスタとかでジェンダー関連のポストのシェアをしたことがなかったので、以前は分からないのですが…GESに入ってから、GESのプロジェクトの宣伝やOiTr設置したストーリーの投稿、フェミニストの方の投稿をシェアするようになりました。それからは休み時間や授業中にジェンダーの問題について話しかけられるようになったと実感しているので、こういった部分では変わってきたのかなと思います。
——友人とディスカッションをするのですか?
佐藤さん:
授業のなかで「ここ、ちょっとあれだったね」と話すことから始まって、そこから発展してより深い問題や普段モヤモヤしていることを話したりしています。
——佐藤さんのように友人間で話す人が増えるといいですよね!稲井さんはいかがでしょうか?
稲井さん:
自分の活動が周囲の人たちの新たな関心分野になるというのが私としては大きなところだなと思っています。例えば、「Ladies and gentlemen」というアナウンス、これをオリンピックでやっちゃうのか…と思ってストーリーにあげたんですね。するとこれまでジェンダー問題に関わったことも考えたこともなかった友達が、「このストーリーを見たときに、なんでそれが問題なのかがすぐわかるようになった自分がいて、すごくびっくりした」と連絡をくれて。周囲の人たちに新たな気付きを提供できたり、一緒に考えられる仲間を増やしたりできていることが、活動をやっていてよかったなと思う瞬間です。
——活動や日々の疑問を共有することで、周囲の人がある問題について知る機会になりますよね。GESさんは大学へ要望書を提出するなど、行動に移されていますが、大学に対してアクションを取ったことで、大学側から返ってきたものやインパクトはありましたか?
稲井さん:
私が所属しているプロジェクト生理用品無償設置と、大学におけるハラスメント報道に関する署名活動の2点についてお話したいと思います。
1点目の生理用品無償設置については、OiTr設置に向けて、私たちの問題意識と、大学側がどのように解決したら学生が一番過ごしやすい環境にできるのかというすり合わせを何度も重ねてきました。敵対するのではなく、一つの共通認識を持って、一つの仲間になって、大学と一緒に解決できたというところでは、大学に対してインパクトを与えられたのかなと思っています。
2点目の署名活動に関しては、上智大生のみならず、オンライン上でいろんな人に拡散をして署名を集めました。大学内外問わず「これだけの人がハラスメントに対してきちんとした成果や結果を求めていますよ」と姿勢を示した結果、大学側も「きちんと対応しないといけないと思っていたけれど、より早急に進めていきたいと思います」というお答えをいただきました。Loyolaでも「ハラスメントの相談窓口」に関しても発信するようにお願いしましたし、大学側の姿勢や取り組み方も変わってきたなと感じています。
佐藤さん:
私が所属している、一般教養科目におけるジェンダー・セクシュアリティ(GS)関連科目の増設プロジェクトでは、全学FDで、学生が増設を望んでいることと、GS科目の少なさや倍率の現状についてプレゼンしました。また要望書を出していないので、これといジェンダー・セクシュアリティ思っている学生がいるってことを先生方や学生センターの方に伝えられたのは大きな一歩ではないかなと思っています。
——大学側に意見を伝えてくださったことで、ほかの方の勇気に繋がったのではないかと思います。声を上げていくこと、大学側に伝えていくことって大事ですね。
稲井さん:
そうですね。私たちの団体が大事にしているのが「啓発に留まらずに実際にアクションを起こすこと」で、団体設立のときから大事にしています。というのも、学生団体というのはSNSなどでポスト(投稿)を作ることで、こういう情報があるよという提供は今までたくさんありました。しかし、実際に自分の環境を変えたいと思って立ち上がるのって結構難しいことですし、今までの学生団体にはなかなかなかった領域なんじゃないかなと思っています。なので、私たちの団体がプロジェクトベースで進めているというのは、こうしたところにあるので、SNSでの活動はもちろん大事ですけど、それ以上に実際に自分たちの目で見て、自分たちの足でいろんな場所に行って環境を変えていくということに注力しています。
——その行動力と実行力は素晴らしいですね。現在取り組んでいるプロジェクトのほかに、注力していることはありますか?
稲井さん:
個人的なことになってしまいますが…私は今、GESの共同代表をしていて、団体が大きくなってきたんですね。というのも、始まったときは10人ちょっとで、私以外みんな先輩という状態で引っ張ってもらって、みんなで能動的に活動していく“少数精鋭”といった感じでした。それが今、40人にまで増え、ほとんどが途中から入ってきたメンバーということで、まだ団体全体について知り切れていないメンバーもいると思っています。GESの第二の成長期じゃないですけど、新しく入ってきたメンバーって大学に入ったばかりの1年生もいるので、どういうところで活動を発展させていけるかを模索している段階です。
——途中から入団したメンバーとして、佐藤さんはどういったことに今後力を入れていきたいなと思っていますか?
佐藤さん:
途中から入った身として、創立メンバーがどのような志を持って創立してくださっていたかというのを最初は知らなかったんです。今年度から入っている新メンバーも私と同じようにその想いを知らない状況で、しかも大学生活にもまだ慣れていない状況で、不安もあると思うので、そこの不安を解消できるようにメンタルサポートでしたり、GESをメンバー自身も知っていけるように、発信していきたいなと感じています。
——活動と関連しているSDGs目標はありますか?
稲井さん:
4, 5, 10, 17に該当しているかと思います。特に17のパートナーシップに関しては、アライステッカーを作ったことが関連してくると思っています。ステッカーを配布するときに「私、当事者だからアライじゃないよ」っていう方がいらっしゃいました。ですが、当事者であろうと、必ず他のセクシュアリティにとってはアライですし、当事者/被当事者、問題に意識を持っている/持っていないとか関係なく、みんなで一緒に問題解決に向けて、横並びで一緒に進んでいけるというのがいいのかなと、団体全体としての見方ですけど、そのように思っています。
——そもそもアライとはどういう意味の言葉なのですか?
稲井さん:
セクシュアルマイノリティーの被当事者が当事者に向けてサポートする、「連帯を示す」際に用いる言葉です。解釈は人それぞれで、当事者と被当事者を分けて考える人もいれば、例えばLGBTQ+のLはほかのセクシュアリティにとって異なるセクシュアリティであるため、アライになりうるという考え方もあります。GESとしては後者のスタンスで、ステッカーを作成に至りました。
——今後の目標はありますか?
稲井さん:
5つあるプロジェクトのうち、まだ要望書を出し切れていないプロジェクトがいくつかあります。実現に向けて、大学側とお互いに妥協し合いながらも一番いい形で作り上げていく、というのが難しくなると考えています。そのため、まずはプロジェクトが完成すること、私たちの団体が5つのプロジェクトだけでなく、さらにほかのプロジェクトまでに活動を広げられるというのが、長期的な目標です。短期的な目標としては、大学に私たちの要望を出し切って、学生にこういうニーズがありますよと知ってもらうことかなと思っています。
——最後に、読者に伝えたいことはありますか?
佐藤さん:
何かモヤモヤすること、自分が無意識のうちに他者を傷つけてしまっていることはありませんか?私たちはこのモヤモヤや無意識のうちの加害性をなるべく解消して、すべての学生が過ごしやすい学生生活を送れるように、5つに分かれたプロジェクトを行っています。ジェンダーセクシュアリティに関する情報もインスタなどで発信しているので、ぜひご覧いただけると嬉しいです。
稲井さん:
ジェンダー問題というと、「いろいろ言っててうるさい」「今はそんなに不平等じゃないじゃん」というような考えを持つ方はいらっしゃるかと思いますが、実際に生活しているなかでは、無意識にお互いを傷つけあってしまっています。なので、ジェンダー問題と聞いて嫌悪感を抱くのではなくて、「自分たちの身近なところから変えていけないかな」「実はこういうところに問題があるんじゃないのかな」というのを、新しい視点から見る。ひいてはそのことが自分たちの生活環境がより豊かになっていくことに繋がるよ、ということがジェンダー問題の面白さかなと思うので、そういうところを知っていただけたらなと思います。
ジェンダー問題に限らず、知らず知らずのうちに身近な人を傷つけていることはないでしょうか。もしかしたらそれは、「知らない」から起きてしまうのではないでしょうか。何事もまずは知ること、次に相手の立場になって考えること、そうすることでお互いに過ごしやすい環境へと変わっていくだろうなと感じました。まずは一緒に、知ることから始めてみませんか?
*1:「OiTr」https://diversity-sustainability.sophia.ac.jp/efforts/1896/
*2:リール動画 https://www.instagram.com/reel/Ccfeu9qJl3I/?utm_source=ig_web_copy_link
(学生職員 アンジェラ)
Instagram:https://www.instagram.com/ges_0424/
Twitter:https://twitter.com/ges_0424