上智大学国連Weeks June 2022「栄養サミットと日本が果たす役割」に参加しました(2022年6月3日)
6月3日、「上智大学 国連Weeks June 2022」の初日を迎え、シンポジウム−『栄養サミットと日本が果たす役割』が開催されました。栄養サミットとは、2021年12月に東京で開催された栄養改善に関する国際的な会談です。このサミットで日本政府は、世界における栄養不足解消のため今後三年間で3000億円の支援をすると表明しました。
これを受け、このシンポジウムでは紛争地や脆弱国家における飢餓・貧困削減のために、日本がどんな役割を果たせるのか、具体的方策を探っていくことをテーマとして掲げました。企画と司会を務めたのは、上智大学グローバル教育センター東大作教授です。学術研究担当副学長・岡田隆教授の冒頭挨拶の後、世界の最前線で活躍されている5名による講演が行われ、それぞれの活動から見えた課題や今後の日本の支援のあり方についてお話いただきました。
はじめに、国際人口問題議員懇談会(人口議連)事務総長・内閣府副大臣の黄川田仁志氏より「日本が世界の貧困・飢餓の解消に向け努力する意味」について語られました。黄川田氏は、自身が事務総長を務める議連の活動を説明した上で、現代の栄養問題には量的な課題だけでなく、カロリーやバランス、ジェンダー差など質的な課題もあると述べました。そして、これらの課題克服のためには、日本の援助の特長である1.質の高さ、2.自立支援、3.相手に寄り添うことの3点を生かすべきだとし、栄養不足の問題における“日本らしい”支援の意義を示しました。
続いて、国連WFP日本事務所代表の焼家直絵氏は「WFPの活動と、栄養サミットの意義や課題」について語られました。焼家氏は、飢餓問題の要因には紛争や気候変動、新型コロナウイルス感染症の影響、COVID-19、価格高騰などが複合的に絡み合っていることを踏まえ、現場重視で支援を行う国連WFPの視点から、日本の国際的支援のあり方について述べました。その中で、栄養問題を解決していくには、様々なセクターの人が垣根を超えて協力する「分野横断型」のコミットメントやアドボカシーが必要であると強調しました。
ペシャワール会会長・PMS(Peace Medical Services)総院長の村上優氏と、ペシャワール会理事・PMS支援室長の藤田千代子氏は「中村哲医師の遺志を引き継いで:アフガン人道危機に対して取り組んでいること」について講演されました。これまで活動されてきた診療所の発足や灌漑・用水路事業、食料配給などの説明を通じて、現地の地域性や個別的課題に合わせた支援をする重要性が語られました。また村上氏と藤田氏は、そのような支援方法が人々の自立を促し、現地に持続可能性を提供するのだと伝えました。
最後に司会を務めた東教授からは「アフガンの制裁と飢餓から考える日本の役割」について述べられました。東教授は、アフガンに対する米国などによる経済制裁や、それに伴うアフガンでの飢餓の実態と、それに対する人道支援や医療・教育に関する日本の役割を説明した上で、支援において重要なのは「自立と安定」を求めることだと強調しました。人々の命を繋ぎ、自立の基盤を構築していくためにも、栄養支援のより具体的な施策を打ち出していくことが今後必要だと語りました。
講演後には質疑応答が行われ、支援機関同士の横のつながりをいかに構築するかなど、より深い意見交換が展開されました。
飢餓や貧困の問題は、社会的状況や現地における課題が複雑に関わっています。だからこそ、多様な支援組織の視点と経験を生かし、相手を尊重したきめ細やかな援助を模索することが今後も求められます。司会を務めた東教授は栄養の課題と向き合っていく上で、このシンポジウムが一人一人にとっての第一歩となることを期待し、会を締めくくりました。 (学生職員 竹内)