キャリアデザイン企画「やりたいことを仕事にする」一番身近な社会問題を題材に考える~DAY2~
2023年5月20日、DAY1に引き続き上智大学にてキャリアデザイン企画「やりたいことを仕事にする~一番身近な社会問題を題材に現場で考える~」DAY2が実施されました。
上智大学学部生・院生、DAY1でお世話になった「たまあじさいの会」の方々、環境への負荷を減らす取り組みを行う企業の方々が集まり、それぞれの立場から様々な考えや意見を出し合う機会となりました。当日の第一部は「ソーシャルグッド企業」による事業概要や実績紹介の説明が行われました。第二部は日の出町にて行われたごみ最終処分場フィールドワークのフィードバックとごみ問題解決に向けた学生によるアイディア出し~プレゼンテーションが行われました。
【第一部】
(永戸考さん・多摩Kollect法律事務所)
まず初めに本イベントオーガナイザーである永戸考弁護士からイベント実施の経緯やこれまでの人生で大切にしてきた考えをお話ししていただきました。永戸先生は、ごみ最終処分場が位置している日の出町で、小さい頃からごみ問題を身近な存在として暮らしてきました。日の出町ではごみ処分場で生計を立てている家庭も多く、ごみ問題に対して表立って反対運動を起こせない状況でした。そのため、ごみ問題をめぐってまちの意見が二分されているという複雑な状況でした。そこで、ごみ問題に対して「中からのアプローチ」ではなく、「外からアプローチ」を試みようとしたのです。また、政府だけでは解決できないような構造的な問題に対しても積極的にアプローチしていきました。上智大学の卒業生というつながりから上智大学生に向けて「DAY1ごみ最終処分場フィールドワーク」「DAY2ソーシャルグッド企業の紹介」を開催していただきました。日の出町でのごみ問題に長年かかわってきた経験、企業への出向経験から、普段ごみ問題にかかわることのない人たちにも社会問題の一つとして問題意識や知識を深めてほしいという思いから企画を考えてくださいました。ごみ問題へのかかわり方を限定しないためにも、たくさんの企業をお呼びしていただきました。
(中里唯馬さん・ファッションデザイナー)
中里さんは、オートクチュールという「着る人の依頼を受けて顧客のために1着の服を作る」分野から衣服を取り巻く環境問題やファストファッションの問題に取り組んでいます。服が破れてしまったら捨てるという価値観を改め、壊れたパーツを新しいパーツと取り換えることで着続けるというお話が印象的でした。
(鳥居希さん・バリューブックス)
バリューブックスは長野県に拠点を構える古本屋で、オンライン上にて本の買取と販売を行っています。小説、雑誌、教科書など様々なジャンルに広がっている本。使わなくなった本や売れ残った本を最後まで資源として利用している事業は、資源の循環の面から大変重要なお話でした。
(三宅仁さん・アイ₋コンポロジー)
自然界で分解されずに残ってしまうプラスチックに対して、自然界のバクテリアによって分解されるプラスチック製品の開発を行っています。自然界に残り続けるプラスチックというイメージをひっくり返す新たな技術に対して、ごみ問題解決への可能性を感じました。
( 岡川紘士さん・GCT JAPAN)
「ブロックチェーン開発事業」「メタバース開発事業」「コンサルティング事業」というキーワードがこれからの新たな時代を考えるうえで重要だと分かりました。また、ビジネスにおいて金儲けだけを追い求めるのではなく、その裏側で自然と向き合わなければいけないという「カーボンクレジット」の考え方は、今後の会社選びや働き方を考えるうえで重要だと感じました。
(荒木美咲桃さん・デルタTス)
20歳という若さで起業した経緯や、起業する上での様々な試練がわかりました。そういった姿勢から、学生たちにも人生を選ぶ自由があり、「自分の好き」をやり方によっては成功させ、続けていけるという希望を感じました。
【第二部】
続く第二部はたまあじさいの会の方々から東京都日の出町におけるごみ問題に関して説明していただきました。ごみ最終処分場が位置している日の出町では、ごみ埋め立てによる周囲の汚染被害、市民運動が長年によって繰り広げられた歴史、焼却炉から排出される煙による健康被害などを語っていただきました。その後、「ごみ問題が抱える根本的問題」、「ソーシャルグッド企業の事例紹介から学生たち自身ができること」についてグループに分かれてディスカッションを行っていただきました。ごみ問題に関してそれぞれの視点から話し合ってもらうとともに、消費者、企業がごみ問題解決に向けて何ができるかをアイデアとして発表していただきました。日常生活の中で感じる過剰包装を少しでも減らす取り組み案や、昔ながらの量り売りを店舗で実施していく案、大学周辺地域を巻き込んだリユース容器の取り組み案、ごみの最終目的地を実感させるような案など様々な魅力的な案が出てきました。
当日は大学の職員の方、たまあじさいの会の方々が審査員となって優勝チームを選定しました。たくさんの魅力的なアイデアが提案された中で、量り売りビジネス「Refil+」を提案したチームが優勝を飾りました。優勝チームの提案した「Refil+」は、日本に昔ながらある量り売り文化を生かした取り組みです。「Refil+」の「+」にはたくさんの意味が込められています。例えば、容器を再利用することで環境へプラスの影響を与えることや、環境にやさしい行動をすることへ付加価値を付けるという意味など。日本に昔ながらあった量り売り文化を生かすことで、日本人の間で広がりやすい点。必要な分を必要な分だけもらえることで、それぞれが自分に合った量を消費できるということで経済的にも環境的にもいい点。以上のように普及・環境負荷の観点で高い評価を受けていました。
この度実施されたキャリアデザイン企画は、普段かかわることがないような人々との交流がみられました。多種多様な人々と交流することでごみ問題解決への新たな視点を育む良い機会となりました。