資源エネルギー庁官講演会「世界の中の日本のエネルギー情勢」が開催されました(2023年5月15日)
資源エネルギー庁長官保坂伸氏と共に日本のエネルギー状況について学び、考える「世界の中の日本のエネルギー情勢」が2023年5月15日(火)、上智学院サステナビリティ推進本部・上智大学経済学部経済学科・資源エネルギー庁共催の下、開催されました。本講演はオンラインでも開催され、高校生や大学生、大学院生など約150名が参加しました。
脱炭素社会の実現に向けて変わりゆく時代の中で起こったロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、世界のエネルギー安定供給体制は一気に危機に陥り、エネルギー安全保障が再びクローズアップされる事態になっています。本講演では、「日本のエネルギー状況」をテーマに、日本のエネルギー、そして政策について学び、考えました。
講演前半では、保坂長官より日本及び世界のエネルギー情勢の変動やエネルギーコスト、日本のエネルギーミックスの課題、GX に向けた取組について説明がありました。エネルギー問題に入る前に、私たちの身の回りに絡めたエネルギーの利用や確保、そして炭素循環について歴史とともにわかりやすくご解説いただきました。「エネルギー」というと、ガスや電力といった資源を想像しがちですが、酸素や二酸化炭素など身の回りにもあふれているものであり、呼吸や光合成、燃焼、炭化などを通してそれらは循環しています。しかし、産業革命以降は、二酸化炭素の増加が進むことで砂漠化が進行し、加えて、食糧・エネルギー政策の中で戦争が起こるようになりました。
講演の内容は現代に移り、今日、発電に必要な資源を輸入する必要がある日本において、肝要なエネルギー政策の大原則である「S+3E」についての説明がありました。S+3Eは、Safety(安全性)と、Energy Security(安定供給)、Economic(経済効率性) 、Efficiency Environment(環境適合)を組み合わせた言葉で、エネルギーを組み合わせていく際の重要な観点とされます。資源に乏しい日本だからこそ、この観点からエネルギー源をミックスすることが大事になってきます。
コスト面では、需要増により天然ガスの価格が急騰しており、また、減産により石油の価格も上昇していると言われています。発電に関するコストは、kWhにかかる発電コストだけでなく、各電源を受け入れる際に追加で電力システム全体にかかるコストも考慮する必要があり、現在、大手電力会社のほとんどは経常赤字を抱え、長官からは節電の重要性そして積極的かつ意識的な節電の呼びかけがありました。
さらに、保坂長官は日本のエネルギーミックスの課題の一つとして、再生可能エネルギーを挙げておりました。日本の最終エネルギー消費量は順調に減っているものの、今後の経済成長等を踏まえて考えたとき、より一層進展した改善が必要だと述べられておりました。また、日本は今後、太陽光発電をもっと導入していく予定であるものの、太陽光発電には限界があり、改善の余地があるとも話されておりました。
講演後半では、本学地球環境学研究科教授 鈴木政史先生がファシリテーターを務め、保坂長官と本学学部生3人、高校生2人が登壇し、パネルディスカッションが行われました。学生たちは、「S+3Eの重要性とともに、バランスよく取り入れる必要性を感じた」「一人暮らしで光熱費がかかっている状況であるが、省エネを心がけようと思った」など感想を述べました。また、「地熱発電が普及しない理由は」「資源エネルギー庁で働くために触れておいた方がよい学問は」など熱心な質問も集まり、どの質問にも保坂長官が分かりやすく、丁寧に回答されました。
(学生職員 児島)