上智大学アジア文化研究所主催国際シンポジウム「共生社会創成の現実:インドの取り組みから考える障がい者の支援と自立」 (2023年11月7日)
2023年11月7日(火)にSophia Open Research Weeks 2023の一環として実施された国際シンポジウム、 「共生社会創成の現実:インドの取り組みから考える障がい者の支援と自立」に参加しました。
本シンポジウムでは、インド・ケララ州にある「Different Art Centre」からお越しいただいた Gopinath Muthukad所長に基調講演いただくとともに、彼の活動の成果であり、障がい者の自立実績ともいえるVishnuさん(同施設所員)によるマジックパフォーマンスが披露され、社会福祉分野を専門とする学者や日本の障がい者支援の専門家からそれに対してのコメント・評価が行われました。
最も印象的だったのは、Vishnuさんが生き生きとした顔で堂々とマジックを披露していた姿です。脳性麻痺により手足や言語に障害があるとのことでしたが、それを感じさせないプロフェッショナルなパフォーマンスにとても感銘を受けました。それと同時にこれまでの「支援」の考え方から脱却する必要性を強く感じました。
これまでは障がい者に対して社会が支援体制を整え、暮らしやすい生活をつくっていくことに焦点が当てられてきました。社会が主体となって、障がい者が抱える身体的・精神的・社会的な「障がい」をどう取り除いていくかが検討されてきました。街中に目を向けてみると、駅構内のホームドア設置率の拡充、ビルに段差解消機の設置、視覚障がい者に配慮した案内板の設置などハード面でのバリアフリーが進んでいるように感じています。実際に上智学院サステナビリティ推進本部でも、ハード面とソフト面の両面から誰にとっても使いやすいキャンパスづくりを推進しています。例えばハード面では、学内の段差解消や、情報バリアを取り除くため文字の大きさや配色、輝度コントラストに配慮したアクセシビリティマップへの作成などに取り組みました。また、ソフト面では、移動困難者など本来優先されるべき方が混雑時などに気兼ねなくエレベータ―を利用できるように、エレベータードアに「ゆずりあおう」の優先表示を掲示し、学内の意識変革に取り組んでいます。
一方で今回のシンポジウムでの障害者によるマジックのように、障がい当事者が主体となって活躍していくことはまだまだ推進されていないと感じました。社会が主体となって支援を行い、障がい者は客体として「一方的に助けられる立場」というように自分の中で立場をいつの間にか固定化していることに気が付きました。もちろん障がいに着目し、障がいに対する周囲の協力や理解が求められる一方で、障がい者の「得意なこと」「ポテンシャル」に着目し、その強みを活かせるような場所や機会を提供することがこれからの社会に求められている。「助ける」「助けられる」という関係ではなく、同じ社会で生きるパートナーとして一緒に社会を作り上げていくことが求められていると強く実感しました。
これからの時代は多様性を受け入れるだけでなく、受け入れたうえでそれぞれが持つ多様なバックグラウンドをどのように活かしていくのか。多様性が当たり前になりつつある社会で次に求められるのは、受け入れるだけでなく「みんなが活躍できる」「輝ける」ような社会なのではないか、と思いました。だからこそ、上智学院サステナビリティ推進本部も「誰にとっても過ごしやすいキャンパス」を目指すだけでなく、「異なる個性を持つ一人ひとりを尊重し、その活躍を後押しできるようなキャンパスづくり」が求められていると実感しました。その意識をもって、できることから取り組んでいきたいです。
(学生職員:郡)