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上智大学国連Weeks October 2022「パリ協定達成に向けた脱炭素への取り組みと SDGsのインターリンケージ : グローバル・ローカルなイニシアティブ」に参加しました。(2022年10月22日)

10月18日、「上智大学国連Weeks October 2022」4日目の本日、シンポジウム「パリ協定達成に向けた脱炭素への取り組みと SDGsのインターリンケージ : グローバル・ローカルなイニシアティブ」が開催されました。冒頭挨拶はグローバル化推進担当副学長・森下哲朗教授から、SDGsの達成に向けて、折り返し地点となった今年、具体的な行動を示すことが必要だという共通認識を強め、国内外の連帯を強めることが非常に大事だとご共有いただきました。
2015年に定められたSDGsとパリ協定合意の後、政府のみならず企業や個人間でも脱炭素の動きが進んでいること、そして日本としては2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標についてどういった行動ができるのかについて、司会を務めた本学非常勤講師で気象予報士の根本美緒氏をはじめ、多くの知見を持つ方々がプレゼンを行いました。

初めに、地球環境学研究科の鈴木政史教授から「脱炭素に向けた政策的・経営的課題の考察」という題目で、気候変動がどのような歩みで世界的にコミットされてきたのか、日本で脱炭素に向けてシナジーとトレードオフの関係にどう向き合っていくのかの考えをお話しいただきました。一番の問題点は地方と都市の人口格差だとして、今後は海外からのインバウンド効果や教育を通じて新たなビジネス機会を創造できるのではないかとのご指摘いただきました。

次に、国際連合大学サステイナビリティ高等研究所 (UNU-IAS) プログラムヘッドの竹本明生氏は昨年開催されたCOP26により、気候変動はルールを策定する段階から実証の時期に入ったと述べ、脱炭素とSDGsを両立させるためには脆弱な立場にいる人に対するクリーンエネルギーの確保と食糧生産の安定が必要不可欠だと示しました。また日本の食糧システムはどうしても輸送して廃棄するプロセスにおいて責任が生じるため、この点をより持続可能にしなければならないと強くステークホルダーに連携を求めました。

また、国際航業株式会社防災環境事業部長の村嶋陽一氏、ヤマト運輸株式会社サステナビリテイ推進部長秋山佳子氏のお二人から、民間企業が事業に持続可能性を取り込んだ事例についてお話しいただきました。日本の建設コンサルに関わる国際航業では、太陽光パネル設置や防災・街づくりを進めるにあたって①科学的根拠に基づくこと②投資家に向けた情報開示をすることの2つに心掛けていることを述べられました。さらに秋山氏は物流の観点から見る脱炭素を考え直すにあたって、現在事業構造改革を進めている最中だと明かしました。単体の企業として対応するのではなく、地域のバス会社や鉄道と連携することで互いの足りない部分を補い合い、運行経路確保と燃料費削減に努めて効率化を目指すエコシステムの構築を行っていることが紹介されました。

最後に長崎県壱岐市SDGs未来課主幹の篠崎道裕氏から「未来都市」対話型社会を目指す壱岐市の取り組みについて講演されました。壱岐市は日本の25年先を行くような超高齢社会であり、このまま何もしなければ地域ごと機能不全になり消えてしまうという懸念を抱いています。この危機感から様々な取り組みを先駆的に行ったことで、2018年にSDGs未来都市認定の第一号の都市の一つに選ばれました。
壱岐市は人口問題に限らず、台風や災害の被害も毎年あることや基幹産業の漁業にも影響が出ていることから温暖化問題にも敏感で、国内初の「気候非常事態宣言」を発令しました。市民の4R(Reduce, Reuse, Recycle, Refuse)推進に加えて2050年の再エネ100%に向け洋上風力発電の採用や水素発電にも積極的に市民・事業者が参画し「限られた資源を無駄にしない取り組み」をしているとのことでした。
また、小学生から行動経済学に基づき、SDGsを楽しく学ぶことができるようなカリキュラム設定がなされており、東京大学やOB・OGなど外部の団体とも交流しイノベーション教育を高校生まで一貫して行っていることを強調されました。
そして現在、通信環境やサテライトオフィスを完備することで首都圏からあえて壱岐の地へ居住地を移し、テレワークを行う人も増えてきているというお話をされました。「壱岐市に関わる人口を増やしていく」ことを目標に老若男女が集まる対話会を定期的に開催し、想いをプロジェクトにする「みらい創造」を行っています。
「地方と聞くともう人口減少が止まらず成す術がないといった印象を持たれがちだが、やれることから着実に、その土地を活かした方法で経済振興や教育推進をできる」と篠崎さんは自信をもってお話しする姿が印象的でした。

各講演後には質疑応答が行われました。特に参加者からはウクライナ情勢が日本のエネルギー安全保障にどう関わってくるのかを案ずる質問が目立ちました。識者の方々は地産地消のエネルギーを絶やさないこと、原子力の議論を見て見ぬふりするのではなく、脱炭素の風潮の中で脱原発理論が薄れてしまったことにもう一度フォーカスすることを挙げました。
また日本独自の取り組みとして森林資源を有効活用できないかといった質問には、再利用や観測定量の削減を減らしつつ、合わせてその地域内の生物多様性への貢献も同時並行で進める必要があるとして包括的な見方をする必要性を訴えました。
最後に、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン (GCNJ) 代表理事有馬利男氏より閉会挨拶として、「企業は問題を引き起こす側から解決する側へと意識変革をし、SDGsやコンパクトへの動きにつながった一方、企業経営者は本来の意味で持続可能性を意識し、理解しているのか、ESG投資に本気度は見えるのか、もう一度統合的に価値創造をしなければならない」と締めくくりました。(学生職員 庄司)