イマヌエル・カントの道徳哲学・法哲学・政治哲学に関する研究
文学部哲学科 寺田 俊郎 教授
- 研究
【研究の概要】
イマヌエル・カントは、人間と人間を取り巻く世界のありとあらゆるものについて哲学的考察を行ったが、その哲学の根底を流れる精神は「世界市民の哲学」である。カントは、自らの哲学の営みが「世界市民」の視点からなされるものだと自認し、その最終目標が「永遠平和」を実現する「世界市民社会」だと見定め、「世界市民」の法と権利について精緻な考察を行った。人間である限り、誰もが自由と平等な人格として尊重され、その自由と平等を守るために国家を形成するべきだが、他方、地球は人類全体のものであり、誰もが地球上のどこにいてもよい権利をもつ、と主張した。その哲学は、今なお多くの哲学研究者に刺激を与え続け、活発な議論の対象になっている。その中でも、倫理、法、政治に関する哲学的考察を研究するのが、本研究の主眼である。
【将来の発展性】
世界史に名を残すイマヌエル・カントが活躍したのは18世紀のドイツである。そのカントがSDGsに関係があると聞けば、訝しく思う人も多いかもしれない。だが、カントの哲学の研究は、表面的で空虚な標語に終わる恐れのある「持続可能性」という概念に深く豊かな内容を与えるために大いに貢献するものと考えられる。この哲学的考察は、地球規模の(グローバルな)さまざまな問題を具体的に考えるときに、それをよりよい方向に導く指針になる。そして、カントとともに、ときにはカントに賛成しつつ、またときには反対しつつ考えることによって、SDGsの理解がいっそう深く豊かになり、よりよい問題解決に繋がることが期待される。
担当教員
寺田 俊郎Terada Toshiro
文学部哲学科