【インタビュー】りそなホールディングス様~Vol.2~
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今回の連携講座に引き続き、本学との新しい企画をお考えのりそなホールディングス様。SDGsやサステナビリティ推進に取り組む熱い想いや、強みの一つである女性社員が活躍できる環境の背景についてもお伺いしました。
――企業のサステナビリティへの取り組みということで、御社の取り組みについても詳しくお伺いしたいと思います。御社では、SDGs達成に向けて4つの項目(地域、少子高齢化、環境、人権)を設定されていますが、その4つを特定した理由や想いを教えてください。
(吉本さん)項目の検討に際しては、我々が取り組むべきマテリアリティについて、経営陣だけでなく全従業員を対象としたアンケートを行い、その結果、上位に挙がったのがこの4つの項目でした。中でも、社員の賛成が最も多かったのは、地域経済の活性化と少子高齢化社会への備えの2つでした。
当社グループでは、「地域のお客様のお役に立つこと」を最大のミッションとしており、お客様を支え、お客様と一緒に成長していくことを第一に事業を行ってきました。今起きている社会の変化を考えると、サステナビリティを推進していかなければ、我々もお客様も持続的な成長が見込めず、地域経済が停滞してしまいます。地域経済の活性化には、まず当社グループ自らサステナビリティを推進し、お客様のサステナビリティ推進を伴走型で支えることが必要だと考えました。また日本が抱えている少子高齢化という大きな課題にも備えていかなければなりません。そして、サステナビリティを推進していくうえで欠かせない項目として、環境と人権を掲げました。
――りそなユーザーとして確かに御社は地域との繋がりが深いように感じますね。では、その4つの中でも「これは他企業に負けていない!」というような、最も注力している項目はございますでしょうか。
(吉本さん)社内・社外を問わず強みとして認識されているのは、人権の中の「ダイバーシティ&インクルージョン」、特に「女性の活躍」です。銀行業界だけでなく、日本の企業の中でも進んでいる方だと思います。この背景には、2003年に経営破綻を経験したことがあります。当時、政府からの公的資金によって事業は継続できたのですが、社内では男性の管理職・若手社員の退職が相次いで業務が回らない状態に陥りました。銀行は男性社会、管理職や総合職は男性がやるもの、というおかしな文化がそうした事態を招いてしまったんです。
外部の東日本旅客鉄道副社長から経営者として来ていただいた細谷さんが「女性も男性と同じように働ける環境をつくりましょう」と大号令をかけ、女性活躍推進に必死で取り組むようになりました。女性が活躍できる環境づくりは、すぐにできるものではなく、長い年月をかけて行っていくものです。時間をかけて人に育っていただき、人に育っていただくための会社の仕組みづくりなどを、修正を積み重ねながらこれまでやってきました。今後日本では少子高齢化がさらに進み、労働人口が減っていきます。どの企業にとっても、女性活躍は欠かせないと思います。
――令和2年度(2020年)には「女性が輝く先進企業表彰」における「内閣府特命担当大臣(男女共同参画)表彰」を受賞されていますが、女性が活躍するためにどういった取り組みをされていますか?また、その効果や周囲の反応はいかがでしたか?
(北條さん)当社グループは、ダイバーシティ・マネジメントの目指す姿を、「多様性を生かした企業価値の創造と働きがいの実現」と定めています。この背景には、多様な人財が持つ多様な意見や価値観からイノベーションが起き、新たな企業価値が生まれ、働きがいが高まっていくという考えがあります。
女性活躍については、①女性社員が自ら希望するキャリアに向けて研鑽していくこと、②キャリアの多様性とイノベーション力による企業価値の最大化および持続可能な社会への貢献この2つの実現に向けて取り組んでいます。具体的な推進・支援は、女性登用の推進とワークライフバランスの支援です。女性登用に関しては、女性管理職比率30%と、日本の企業では比較的高い水準になっていますが、今後さらに伸ばすとともに、管理職の中でも支店長や部長といった経営職層の比率も高めていくこと、女性役員比率も高めていくことを目指しています。
2030年までに女性の管理職比率、経営職階比率、役員比率とも、2021年度期初比で+10%高める目標を掲げ、社外にも公表しています。また、女性社員のキャリアに対する意識改革を進めたり、女性社員に関するアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を取り除くための研修を行ったりと、社員の意識改革にも取り組んでいます。女性登用とは、女性社員を優先して管理職にする、ということではありません。自らキャリアを志望し、力を備えた女性が管理職になっていくような環境づくりに挑戦しています。そのために、女性社員に対する育成の機会を提供しています。
また、ワークライフバランスの支援にも注力しています。結婚や出産といったライフイベントによってキャリアが途絶えることのないよう、仕事と家庭を両立できる支援制度や、柔軟な働き方を実現するために、本部だけでなく営業店でもテレワークができる環境を整備しています。また、出産で長期間職場を離れた後、安心して復職してもらうための支援制度もあります。さらに、周囲の意識醸成にも通じるのですが、男性社員に向けた“イクボス”セミナー[i]の実施や男性の育児休暇取得率も例年概ね100%を達成しています。
こうした取り組みを行ってきたことで、女性活躍に関してはリーディングカンパニーになってきたという自負があります。りそなの女性活躍に強い興味を持って弊社を志望してくださる女性学生は多いですし、これまで銀行業界に興味がなかった人も「ここなら生き生きと働けるだろう」「ここならキャリアアップを目指していけるだろう」と考えて志望してくださる女性学生も多いです。
(吉本さん)受賞したときに何か特別なことをやっていたわけではなく、長年取り組んできた結果、このタイミングで表彰されたのだと捉えています。一貫してやり続けているのは、「どうしたらもっと働きやすい環境になるか」「どうしたら仕事を続けやすくなるか」を女性社員に聞き、その後の制度設計にも女性社員が関わることです。こうしたことを20年近く続けてきた結果が受賞につながったのではないでしょうか。
――銀行業界はまだまだ男性社会というイメージがありましたが、御社の取り組みから学ぶことは多いですね。女性活躍の推進のほかに、今注力していることはございますでしょうか?
(吉本さん)多くの方々に「りそなグループは、お客様や地域社会と一緒に明るい未来を創ろうとしている企業なんだ」という印象を持ってもらうことです。当社の商品やサービスを使ってもらわなくても、その理念に共感してくれる人が増えてくれたら嬉しいなと思っています。そこで、今年に「りそなのSDGs~りそなのりそう~」という特設サイトを開設しました。
※特設サイト「りそなのSDGs~りそなのりそう~」<https://www.resona-gr.co.jp/sdgs/index.html >
――動画を拝見して、御社のSDGsに向けた取り組みや想いがダイレクトに伝わってきました。では、最後になりますが、読者に伝えたいことをお聞かせください。
(吉本さん)寄付講座を通じて感じたことですが、SDGsに関心を持ち、自分にできる取り組みを考え、行動している学生さんの中には、一人の力に限界を感じている方もいらっしゃいます。でもこれから社会に出ると、今よりずっと大きな力を持ち、周りを巻き込む影響力もどんどん大きくなります。私は今回の寄付講義で、サステナビリティの視点で企業の取り組みを評価する方法を約50人の受講生にシェアしました。今後受講生の方がそのスキルを使って行動してくれたら、私が持っていた影響力が何倍も増えることになります。一人の力は小さいように思えますが、そんなことはありません。持続可能な社会への期待と同じように、自分の未来にも期待と希望を持ち続けて欲しいと思います。
(北條さん)今、学生の皆さんがサステナビリティに関心を持っていることは、とても嬉しいことです。2030年や2050年の未来は先のことのように見えますが、今の学生の皆さんたちが社会を牽引している時代です。その頃にはお子さんが生まれている方もきっと沢山いるでしょう。今の私たちの行動の一つ一つは、そうした「未来を繋ぐ存在を守る」選択です。これから就職する方は、働く企業の事業は社会にどんな価値を還元しているのかを考える、あるいは就職以外の選択をされる方も、自身の行動が社会とどんな繋がりをもっているかを考える。私たち一人ひとりのそんな行動が少しずつ良い影響を生み、きっと今より良い社会に繋がっていくと思います。
吉本さん、北條さん、インタビューにご協力いただき、ありがとうございました!過去の経験から積み重ねてきた小さなことが、今のように大きな成果やインパクトに繋がっているように思いました。未来のためにできることを、どんなに些細なことでも一つずつ始めていきたいです。
(学生職員 アンジェラ/OH)
[i] https://www.resona-gr.co.jp/holdings/sustainability/whatsnew_c/detail/20190402_988.html