プラットフォーム労働に関する研究
総合人間科学部社会学科 今井 順 教授
- 研究
【研究の概要】
プラットフォーム・ワークの拡大が、雇用関係を中心とする「働き方」をどのように変え、そのような変化が資本主義的労働社会のサステナビリティにどのような影響を与えるのか、評価する研究です。コロナ禍下でウーバーイーツの配達員が増えるなど、雇用に依らない働き方が拡大しました。プラットフォーム・ワークは、これまで「企業組織による雇用」中心だった社会を、高い市場性と非雇用によって特徴づけられる方向に向けて変質させようとしています。むろんこうした働き方が巷間言われるとおり、本当に自律的で、キャリア形成や家族形成にも大きな問題を生じさせないサステナブルな働き方ならば問題ありません。しかし、こうした変化が、働き手の日常生活やキャリア・人生計画を危うくしているのなら問題です。その場合、雇用・社会政策がどのように対応できるのか、すべきなのか、明らかにするための研究です。
【将来の発展性】
プラットフォーム・ワークは高い利便性や労働者の自律性を支持する働き方だと称揚される傾向にありますが、現実的にはプラットフォーム・ワークを含むフリーランスの賃金や雇用の安定性が著しく低く、このままこうした働き方が増えることは、日本の資本主義的な労働社会のサステナビリティを危機にさらすことになります。日本のこれまでの働き方はこれまでも過労死や少子化をもたらす大きな原因と考えられており、すでにサステナブルな働き方ではないと考えられるようになっています。そこにさらに不安定就労を増やすことは、きわめて危険なことです。もっとも、こうした働き方を選ぶ人たちには、これまでの日本の雇用労働こそ非自律的でサステナブルではないとの認識が根強くあることから、自営業的(フリーランス的)働き方が魅力的に映っており引き込まれていくようです。であれば、この働き方をサステナブルな方向で育てるにはどうしたらよいのか、それを考えることがこの研究課題の方向性だと考えています。