フランスにおける植民地出身エリート研究
文学部フランス文学科 永井 敦子 教授
- 研究
【研究の概要】
植民地出身のエリートの若者が、修学とキャリア形成のなかで出会うジレンマと、それへの彼らの向き合い方を、著作を通して研究する。
フランスでは1920年代に、アフリカやカリブ海諸島の植民地で生まれた優秀な若者が国の給費制度を利用して「内地」で学び、国家資格を得て、「内地」もしくは出身地で要職に就こうとするようになった。こうしたエリートたちは、共和国の平等の精神に基づいた教育制度を享受したものの、そうした平等性がキャリアのなかで保証されたわけではなかった。本研究では、マルチニック出身の作家で社会学者のジュール・モヌロ(1908-1995)の人生と著作を、主たる対象としている。占領国からの独立を説く植民地出身のエリートたちから距離を取ったものの、「内地」の知識人たちからも受け入れられなった彼が、抱いていた同化主義的理想を裏切られながらも、社会学の分野で研究を世に問い続けた苦闘の行程を明らかにする。
【将来の発展性】
モヌロと同時期に同じくアフリカやカリブ海諸国からフランスに学びに来た他の作家や政治家の著作へと、分析対象を拡げる。
主な業績
・Atsuko Nagaï, «La Correspondance Gracq-Monnerot», Julien Gracq et le sacré, Garnier, 2018, p.203-220.
・永井敦子、『ジュール・モヌロ』、水声社、2019年。
担当教員
永井 敦子Nagai Atsuko
文学部フランス文学科