アンモニアを燃料としたカーボンフリーエンジンの開発
理工学部機能創造理工学科 鈴木 隆 教授
- 研究
理工学部機能創造理工学科 鈴木 隆 教授
理工学部機能創造理工学科 一柳 満久 准教授
【研究の概要】
SDGsに掲げられる環境負荷の低減やエネルギー政策の一助として、二酸化炭素(CO2)を排出しないエンジン開発を目的としています.アンモニア(NH3)は私たちの周りの多様な化学製品をつくる基礎原料の1つとして重要な役割を果たしており,ナイロンや自動車部品をはじめとして家電,建材,医療用品などに広く使われています.
近年では二酸化炭素削減のために用いられる水素エネルギーの貯蔵,輸送媒体(エネルギーキャリア)として注目されています.また,アンモニアは燃焼しても二酸化炭素を排出しないカーボンフリーな燃料であることから,アンモニアエンジンの開発が急務とされています.しかしながら,アンモニアは燃焼性能の難点 (発火温度が高い,保炎範囲が狭い,燃焼速度が遅い) ,窒素酸化物の排出,腐食性などの問題から,熱工学,環境化学,材料科学,精密工学の側面から研究を行っています.これまでに,副燃焼室,グロープラグ,点火プラグを実装した高圧縮比の試作エンジンを開発し,環境性能と信頼性が得られるよう実証実験を行っています.
【将来の発展性】
日本は現在、その一次エネルギー供給の93%を化石燃料に依存しています。2050年に向けてCO2排出の80%削減を図っていくためには、海外から大量の水素とアンモニアを輸入する必要があります。そのため、輸入したアンモニアを燃焼させる技術は、社会的な意義および波及効果は大きいと考えています。例えばカーボンフリーエンジンと発電装置を組み合わせることにより、小規模発電システムの開発などが期待されています。また、常温で8.5気圧と容易な条件で液化するアンモニアは輸送や管理が容易であることから、発展途上国での発電事業や二酸化炭素の排出量削減などに活用されることも期待されています。